あたりまえのこと

改めて言うが、当社は派遣会社である。長く勤めているスタッフが多くなってきたので、派遣先から直雇用の申し出をたびたび受ける。
先週の火曜日にもそんな電話が掛かってきた。
「◎◎さんの意向を聞いていただきたい。」 ということだったので、スタッフの公休日を見計らって連絡をした。

「雇用の件ですよね~ニコニコ 私も△△さん (派遣先担当者) から聞いたんですけど、直雇用にはなりません。体力が続く限りできるだけ勤めたいとは思っていますが、あくまでもキャリア・ンの派遣ということでお願いします。」 その理由は〝メリットが感じられない〟の一言だった。

「全国の (責任者) 会議に出たりすると (そんな立場にいるスタッフです)、色々な方達と一緒になることも多いんですけど、ウチ (キャリア・ン) は、待遇がいいんです。時給もいいし、社会保険も加入している。有給はちゃんと取らせてくれるし、健康診断もあって、きちんとしている。直雇用になっても、売上の条件をクリアしなくちゃ賞与は出ないし、残業代もわずかな手当の中に吸収されてしまう。そうすると、年収は下がり、確実にこれ以上の負荷が増えます。
勿論、派遣だからと言って仕事に手を抜いているわけではありません。
会社 (=派遣先) は、人件費を削減したいだけなんだと思います。」

当社の自慢をしたいのではない。社会保険、有給、健康診断・・・それは労働者を遣う会社としては、ごく〝あたりまえ〟のことだ。
しかし、最近は、その〝あたりまえ〟が〝あたりまえではない〟会社も多いということを知っていただきたいのだ。
そして、決して直接雇用だけがいいのではないのも事実だ。
現実として、『正社員』 だった人が、会社の待遇が悪いといって、当社の派遣社員に転籍した例もある。半年前のことである。

派遣はスタッフに有利な条件で契約を結ぶことだってできるし、だからこそ、私は〝適正価格〟を維持している。会社が適正な利益を得られなければ、全ての従業員を守ることはできないと思うからだ。
しかし、あくまでも〝適正価格〟なので、スタッフの資質に価値がないと判断したら、クライアントに契約金額を下げる申し出もする。それも〝あたりまえ〟のこと。派遣は、人の能力を売る仕事ですからね。

世間は、非正規雇用の労働者の待遇は悪いと決めつけている。
だから、行政は 『直接雇用』 や 『正社員』 雇用に拘り、補助金や助成金を厚くしている。制度はいつも片手落ちだと思う。

無論、私はスタッフ達を当社に縛り付けておくつもりはない。
派遣先からスタッフにとって好条件を提示された時、直接雇用になった方がスタッフにメリットがあると判断した時は、よく言い聞かせてスタッフを派遣先に送り出すことだってある。今までもそうしてきたし、これからも変わらない。これも〝あたりまえ〟のこと。仕事は生活である。

そういえば、カンブリア宮殿で佐藤可士和さんが言っていた。
〝あたりまえ〟のことを〝あたりまえ〟にすることが一番難しいって。
〝あたりまえ〟のことができれば、それは十分レベルが高いのだと。


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