10数年前、人形師のジュサブローさんがデザインした着物をどうかと薦められ、大枚を叩いて購入したことがある。着物に凝っていた時期だったし、そのデザインはシンプルだったが品があり、色も美しく、色白の私の肌にとってもよくあっていた。その着物にあわせて、銀糸が織り込まれた上等の帯も購入。着物にハマるとあとが長くて恐い (=お金がかかりすぎる)・・というのはこの時に学んだことだった。
それでもその買いものに満足して反物をお仕立てに出し、気分よく過ごしていたある日、実はこのジュサブローさんと、着物メーカーの 「小田章」 (京都市) との契約が1993年に終了していたことを知った。
ん?と思い、色々と調べたところ、ジュサブローさんと小田章の契約は1978~1993年までの15年間だったというが、小田章はその後も着物の製造販売を続けていて、当時裁判中だったのだ。
っていうことは、購入した着物はジュサブローさんの作品ではないということになる。これは・・・と思い、私は辻村寿三郎さんの事務所まで電話をして確認したのだった。ジュサブローさんの着物ではないのか?という私の問いに、「現在は着物のデザインは致しておりません。」 というのが先方のお答えだった。
その着物は、確かに以前ジュサブローさんがデザインしたものだったのかもしれない。しかし、契約が切れているということは、その〝本人が認めていない〟ものであるということだ。そんなものに価値はない。
それに、そんな売り方をしているメーカーの企業倫理もどうかと思う。
それを知らなかった販売店の甘さも気に入らない。
着物は気に入っていたし、ちょっともったいないな・・と思ったけれど、納得できないものは手元においておきたくない。私は即座に返品した。
販売店側は慌ててすぐ調べたらしく、ジュサブローさんのデザインであることは間違いないけれど、契約が切れていることは事実だと認めた。
お客さまの足元を見たり、軽んじる商売をする人や会社は大嫌いだ。
つい最近そんな人と対応していて、私はこの話を思い出していた。
真面目に、誠実に、真摯に、謙虚に。
人も商売もそれでこそ永く生かされていく。
ジュサブローさんと小田章は、2004年10月に和解している。
追伸 : クローバーの保護者の皆さま、業務連絡が入っています。
(保護者対象キャンドルづくり&ハゼ釣り)